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2002/10/29 第21回

2002/10/29 第21回

三木谷 浩史氏 : (楽天会長兼社長)
「楽天の未来戦略」

 

三木谷 浩史氏 : (楽天会長兼社長)

創業時は2人でスタート。アメリカで成功している事例もあり日本でもいけると思ったが、契約が取れなかったこと。1000件営業して10件の成約、それもお友達関係を無理やり契約させたこともあった…

三木谷  楽天の三木谷でございます。よろしくお願いします。
今までに300回か400回くらい講演をやっていると思いますけれども、今日は知り合いの方がいっぱいいるという事で、フランクに、いろんなお話をさせていただければと思います。
私がさせていただく話というのは1つくらいのパターンがありまして、一つ目はベンチャー企業論。2つ目がインターネットビジネス、インターネットの将来像 はどうなるのかという話。  3つ目がEコマース、楽天も含めてインターネットショッピング、このEコマースというのがこれからどういう風に展開していくのか、というような話が中心 となっていきます。
その辺を折りまぜながら、本日は起業志望の方もいらっしゃるかと思いますので、楽天を例にとって、楽天の創業からの話も含めてお話をさせていただきたいと思います。
今、楽天は日本のインターネットショッピングの分野ではナンバーワンの会社になったわけですが、もともとは97年の2月に私と本庄君という慶応の学生との二人で作りました。
資本金約2000万円というふうに書いてありますが、そこから現在スタッフが約250名、グループ会社を含めると約500名の会社になりました。
年間の商品取扱い高が1000億円くらいの会社でございまして、毎年倍々になっているというような状況でございます。
ここで私が一つ非常に誇りに思っているのは、アメリカで成功しているインターネットの会社というのはヤフー、アマゾン、イーベイ等になるわけですが、  だいたいそういう会社はかなり早い段階でクライナパーキンスですとかセコイアキャピタルというベンチャーキャピタルから、少ない会社で50億円、多い会 社で200億円くらいの資金をIPOの前に調達して、  シリコンバレーの組織ぐるみで企業を作ってきました。
しかし楽天はどちらかというと、この2000万円のサーバーを1台買って始めたところから、全て経営資源も、財務的な資源もインターナルに調達してきたという事でございます。
会社の方も最初の時は本当によく聞かれる質問で、何が一番苦労しましたかというのがありますが、私はあまり苦労を苦労と思わない人間なのですが、一番チャレンジングだったのは最初の出店者を集めるところでした。
最初のシステムを作るのにだいたい8ヶ月くらい時間がかかりまして、97年の5月にサービスインしたんですが我々の予想では立ち上げた途端に、1ヶ月で 1000社くらいは契約できるだろうという、  トンチンカンな予想だったんですが、実際やってみたら、最初に1000社くらい営業にまわって契約してくれた会社が10社。100社に1社でしたね。
しかもその10社もほとんどは身内の会社みたいなところで、無理矢理社長にハンコ押させて契約するというような感じでした。そこからコツコツとためていき まして、現在はモールが約6000社、  トラベルとかビジネスをあわせると約9000社の企業が、楽天の上で物の売買やサービスを提供するようになりました。
今でも不況下の中、楽天の中での取り扱いがどんどんどんどん増えている、というふうになっております。
ここから少し、ベンチャーの話をさせていただきたいと思っております。
よく聞かれる質問で、「楽天が成功した一番大きなポイントは何か」という事なんですけれども、おそらく僕らはその成功を確信といいますか、  信じていたというところが1番大きいんじゃないかなというふうに思います。
今でこそ我々がインターネットショッピングは爆発的に大きくなるだろうと言っても誰も疑わないわけですが、  6年前、私がこの会社をつくる前にソフトバンクの孫社長やほとんどの先輩経営者にこういうインターネットモールっていういいコンセプトがあるので出資し て下さいよ、  というふうに行っても、ことごとく断られていました。
孫さんからは公開する3日前くらいに電話がかかってきて出資させてよって言ってきてくれましたけども、ほとんどの人はインターネットショッピングには否定 的でした。  その時に我々が思っていたのは「集客」と「システム」と「ノウハウ」を提供するようなサービスを展開していけば必ず成功するだろうという事でした。
つまり、我々はどういうサービスを展開すれば成功するかという確固たるイメージがあったというとこが番大きな成功の要因なんじゃないかなと思っております。
特に起業において僕が1番重要だと思っているのが直感というものです。皆さんはビジネスモデルは科学的に思いつくと考えているのではないかなと思います。
特にハーバード、MBAで興銀を辞めて起業した三木谷くんというのはいろいろ考えた上でこのインターネットモールを始めたに違いないという見方をされてい ると思うのですがそんなことはなく、  「こうやったらいけるんちゃうか」という非常に直感的なものでした。
ほとんどのビジネスのアイデアというのは直感から生まれてきているんじゃないかなと思っております。ただその直感というのは、  理論的に考えるよりも深いと思っておりまして、ほとんどの成功しているビジネスというのは右脳から出てきているんじゃないかと思っております。
一つそういうふうに思ったきっかけというのが、昔NHKスペシャルで、将棋を指していた羽生名人が頭にサーモスタットをつけて将棋を打ったんですね、  すると右側しか赤くならなかったんです。つまり羽生さんというのは将棋を打っているときにロジックで考えているのではなく幾何学的にイメージで考えてる んですね。
同じことを小学生に対してもやったのですが、小学生は左側しか赤くならない、つまり小学生というのは将棋をとる時に向こうが歩を打ってきたらこちらもここ に歩を打って、  金を打ってきたらここに打つという、そういうデシジョンツリーで考えているんですね。
つまりビジネスにおいても、当然ロジックで考えたビジネスは成功するのは非常に難しく、直感的に「これはいける」と実感できたビジネスというのが成功する可能性が高いんじゃないかなと思っております。
ただ将棋と違ってビジネスは複数の人数でやらなくてはいけないので、この直感的に「いける」と思ったコンセプトを今度は言葉に落としていくという作業が必要だろうと思っています。
そういうところで私は4つの事項を考えました。1つ目は楽天が成功するための仮説というのはなんだろうかということ、2つ目はこのビジネスでやって発展す るのか、  3つ目はまわりが失敗しているけどどうしようかということ、4つ目は成功するサイクルを作れるか。まず、ここがひとつの大きな分岐点だったんですね。
当たり前のように書いてありますけど、4つの仮説と、今読むのもちょっと恥ずかしいなと思うんですけど、1番目はインターネットはもっと簡単で便利になる。
2番目はインターネットは爆発的に普及する。3番目は日本人はインターネットで物を買うようになる。4番目はインターネットで流通が変わる。
今読めばもう誰も疑うことがないこの4つを6年前に信じていた人は多分この中に5人もいないんじゃないかと思います。
おそらく当時「この仮説についてどう思いますか?」と聞いたら、日本にはコンビニエンスストアもあるし通販もアメリカみたいに大きくないし、  だいたいキーボードっていうのが日本人は苦手だからインターネットって普及しないんじゃないですかと、いうふうに多分言われたんじゃないかな。
アメリカでもインターネットショッピングっていうのはその時成功していなかったわけですし、それでも僕らはこの仮説を信じたというところが1番の大きな違いだったんじゃないかなと思います。
ただ、私がもう一つここで付け加えたいのが、この仮説はまだまだ展開途中だということであります。すなわち、インターネットはもっと簡単にもっと便利になる。
もうかなり普及して簡単にはなってきているんですけれども、まずインターネットはもうすぐテレビにつながります。それからもう一つインターネットは爆発的 に普及し、  もう年末までにはハイスピードインターネットは700万世帯に普及する。全世帯にインターネット、ブロードバンドは必ず普及することになります。  それが2年先なのか10年先なのかはわかりませんが必ずそういうことになる。
つまり日本人はもっともっとインターネットで物を買うようになるということです。我々は楽天の流通総額を1兆円にしようと思っているのですが、もしかしたらそんなもので替わらないかもしれないです。
今日はこういうクローズな会なので少し普段しゃべらないことをお話しますと、先週日曜日の日経新聞にコジマ電機の一面広告がありました。
パソコンとかデジカメとかの値段が書いてあって、例えばカシオのパソコンが6万5000円です、電話してくれたら更に安くなるかも知れませんというふうに 書いてありましたので、  片っ端から全部電話させて料金を調べて楽天との価格比較をしました。古い機械、要するに在庫処分商品関連はコジマの方が安かった。しかし新製品に関して はほとんどが、楽天の方が10%から15%安い。
もしかしたら楽天以外でもっと安いところが見つかるかもしれませんが、つまりそれだけリアルな流通に対してインターネットコマースはもう価格的優勢を持ってしまっているという話です。
1回調べてみるだけでもいいと思うのですが楽天でも価格公募でもどこでも、どれくらいインターネットの方が安いかというのを考えていただければいいんじゃないかと思っております。
おそらく個人商品の家とか耐久財は除いて20%~30%くらいはインターネット、通販になると言ってもいいんじゃないかと思っています、もう1つはまた話 が戻ってしまいますが、  楽天をやる時に非常に重要だと思ったのが、それまでにもパソコンの家庭教師の派遣とか、ファイナンシャルアドバイザリービジネスをパッケージ化すると か、いろんなビジネスをやってきたんですが、  最初は手堅くやって、あとでバカッと成長できるビジネスってないのかなって考えたんですね。つまり、戦闘型って書いてありますけども戦闘型っていうのは 要するに局地戦で勝っていけばいいと、  月額5万円6ヶ月前払いで30万円up front cashでもらえればいいわけですね。
つまりベンチャーからしてみると20社契約すれば売上は100万だけど、up frontで600万円のcash flowがあるというビジネスを考えつきまして、やりました。
これは企業の方からしてみれば6ヶ月前払いで30万円も5万円もそんなに変わらないと、PL法上もあまりインパクトがないので非常にいいモデルだったわけ ですけれど、  ベンチャーからしてみると6ヵ月前払いでもらえることによってcash flowをつなげるというモデルを考えました。
これがだんだんとmarket dominateしていけば、いずれマージン制の導入できるだろうということで、今年の4月にマージン制、つまり、売上のだいたい3%くらいをいただきま すよ、  というモデルを展開してきました。今までは出店数が増えないと楽天の売上は増えなかったのですが、これによって店舗数が増えなくても、  流通総額が増えれば、楽天は儲かるというモデルの導入ができたということで、普通の成長曲線が直線からもっとテールアップのモデルになったんじゃないか なと思いました。
もう1つここも重要な話なので少しさせていただきますと、楽天が成功した理由は、当時、インターネットショッピングモールとかビジネスとかはほとんど失敗 していたんですけれども、  周りで失敗しているビジネスがあればあるほど、実はビジネスチャンスなんじゃないかなと思えたことだと思います。失敗モデルをどこか改善すれば、  成功できるという発想ができればそれは非常に大きなビジネスオポチュニティーに変わっていくということが言えるんじゃないかなというふうに思っておりま す。
もう少し詳しく説明すると当時NTTさんがやっていたようなインターネットショッピングモールというのは初期費用が100万円、毎月の出店料が30万円で 売上の13%もらいます、  しかもシステムは一切ありません、そういうモールばっかりだったんですね。「そんなんだれがやるねん」というところに、我々のモールは月額5万円固定で 自分で簡単に編集できますよというものでした。
自分で簡単に編集できますよ、というのは聞こえはいいんですけれど要はモールサイドでやっていたオペレーションを店舗サイドにやらせるということですので店舗もメリットがあるし、楽天にとってもメリットがある。
しかもコストはだいたい5分の1から10分の1で、そうすることによっていろんな新しい情報が集まる、そういうモールが完成したんです。次にそういうカタ チで最初の創業期のポイントとしては、  1つは他人と違った仮設を考えつけるかどうかということ、特にマーケットに対する見方という意味において非常に重要なんじゃないかなと思います。それか ら他人が成功してないからといって必ずしもそのビジネスの将来性がないということではなく、そこを成功させるkey factorが何かということを思いつく必要があるんじゃないかなと思います。
次に、我々は単なる小さなインターネットベンチャーではなく、どんどんと成長していくベンチャーになっていく上で第2フェーズというのを迎えました。ここ ら辺が、  他のインターネットベンチャーと楽天の大きな違いなのかなと思っているのですが、我々はいつも草ベンチャーで終わるなという話を社員にしております。
アメリカのマイクロソフトだってデルコンピュータもオラクルもサンも、10年前はベンチャーだったわけです、ところが今では世界有数の企業にまで成長し た。  日本にはなかなかそういう会社が出てこないという中において我々としては是非楽天をそういう会社にしていきたいと思っておりまして、そこで僕は社員に成 功の五つのコンセプトというのを出しました。
一つ目は常に改善、常に前進。これは現状に甘んじることなく必ず日々サービスを向上させていくということ。それから二つ目に、これは特にベンチャーをやる 人にとっては重要なのかなと思っていますが、  プロフェッショナリズムの徹底。ビジネスのプロになろうよ、という話ですね。昼に来て気分良くみんなで和気藹々とビジネスやるのもそれはそれでいいんで すけれども、  そうではなくちゃんとした「業」としてのビジネスを起てようということ。3つ目は仮説・実行・検証。
これは皆さん言うんですがやるのはすごく難しいですね。だいたい仮説・実行までは行くんですけど検証がない。仮説・実行、仮説・実行ばかりやっていてです ね、  結局検証しないのでimproveしない。4つ目が顧客満足の最大化、5つ目がスピード。インターネットだけではなくて、  やはり競争条件に勝っていくということにおいてはスピートというのはすごく重要なことだと思っております。他社が3ヶ月でやることを1ヶ月、  3年でやることを1年でできれば必ず勝つと思っておりますので社員には、「そんなこと言ってもそれは1年くらいかかりますよ」という話でも、普通の会社 はそれでいい、  でも勝負に勝ちたいのであれば他社が1年でやる事を3ヶ月でやれ、という話を常にさせていただいております。
単に何がなんでも早くするということではなく、そこはプロセス改善というコンセプトが入ってくるわけですが、  とにかく他社よりもいろんなサービスを早く立ち上げていくということが重要になってくるということで、それからいろんなサービスを展開していますという 話です。今日の本題の、  これから楽天をどうするのかという話なんですが、今楽天の取扱い高は年ベースで約1000億円です。それを我々は4年以内に1兆円まで持っていこうと 思っているわけなんですが、  多分いくだろうなと思っております。なぜかというと、楽天がすごいということではなくてマーケット自体が拡大しているからで、マーケット自体がいくだろ うなというふうに思っております。
ECの高成長がどこからくるか、というとこのマーケット的にはブロードバンドの普及がどんどん進むということ。高速接続で、なおかつ常につながっていると いう事ですね。  ダイヤルアップの環境の中では楽天のトップページを表示するのに約13秒かかりました。それがADSLになったら約1秒で出てくる。つまり、今まではカ タログを1ページめくるのに13秒くらいかけていた、  それがサラサラと見られるようになってくるという話です。しかも、今までは3分間見ていると10円かかる、そういう非常に不便な環境の中でもここまで成 長してきたわけですから、  これがほとんどの世帯につながれば非常にマーケットとしては大きくなる。それからインターネットの多様化、モバイルコマースの普及、そしてテレビがイン ターネットにつながります、という話です。
モバイルコマースの普及によってどういうことが起こるかと言いますと今楽天の全商品をiモードとかjスカイに載っけちゃおうという事をやろうと思っています。
そうするとリアル店舗とバーチャルの価格比較っていうのができるようになるんですね。例えば秋葉原に行ってパソコンを見て、その場で買わずに楽天で買うと か、  ビックカメラに行って一応マッサージチェアを試してみて楽天で買うとかですね。ルイヴィトンのブティックにいって並行輸入品を楽天で買うとか、  そういうことができるようになるという事もあるんじゃないかと思っています。
それからテレビがインターネットにつながる。もうパナソニックさんもソニーさんも出していますけれども、やっぱりパソコンというのは立ち上げるまでに時間 かかりますし、  置いている場所もあまりcomfortableじゃないわけですよね、ただこのテレビとインターネットがつながることでTVベースでインターネット ショッピングがどんどん楽しめるという時代が3年以内にはもうくるだろう、  とういうふうに思っています。それから、ユーザーのスキル、理解の向上。
要するに、 多分まだ皆さん知らないというふうに思うんですけど「ネットの方が安い」という事実をだんだん皆さんが理解しだすという事でございます。
誰も量販店に行かなくなるということが起こるかも知れない。量販店の人がいたらどうもすみません。それから後はインターネットショッピングって便利だよねっていうふうにだんだんわかってくる。
最初のうちはだいだい私の友人でも、クレジットカードの番号入れるのはいやだしすぐに使いたいんだからという話だったんですが、  いったん使い出すとやっぱりネットショッピングって便利だ、という話になるんですね。要は人が移動するか物が移動するかという話だと思いますし、  探したいものがほとんど見つかるということを考えていけば、ネットショッピングの可能性は非常に高いという事をわかっていただけるんじゃないかなと思い ます。
そういう中で我々としては、EC=楽天、すなわちインターネットショッピング=楽天という図式を作りあげていくことによってなんとかこの流通総額1兆円というのを達成したいというふうに思っています。
以上簡単に私の方からのプレゼンテーションなんですが、ちょっと話がいろいろ前後しましたが、  簡潔にまとめさせていただくとやはりベンチャーをやる上では他人がやって成功しているビジネスではなく  他人がダメだと思っていても自分が今後いけると思うマーケットを選ぶということが1つのやり方としてはいいんじゃないかと思います。
そしてやはり仮説をしっかりたてるということがすごく重要で自分の成功するポイントというのが何かということを信じてやっていくという事が重要じゃないかと思っております。
楽天は今成長し続けているわけですが、何回も何回も楽天はダメだと言われた壁をぶち破ってきているわけですし、これからもそういう局面がきっと来るなと 思っているわけですが、  要は他人に見えてない事が自分には見えているということ、それを信じる力というのもまた重要じゃないかと思っております。インターネットショッピングに ついてはそういう意味でいうと、  これは非常に大きくなるというふうに合理的に考えれば、多分誰も異議を唱える人はいないかなと思うんですけど、だいたい日本人というのはすごく否定的に 考える人種で、  そうは言ってもそうはいかないだろう、という事で終わっちゃうと思うんですけども、そうじゃなくやっぱりいけるんだと思うか、  あるいはそういうふうにさせてみせるんだって思うかどうかがベンチャーをやって成功するかどうかの別れどころなのかなと思っています。
たいへん話があっちゃこっちゃいってまとまりのない話でしたがとりあえずここらあたりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
田代  これからトークショーに移りますが、事前に皆さんからは質問をいくつかいただいております。 この一連のお話が終わった後に皆さんからまた質問があればぜひお受けしたいと思いますので、その辺も考えながら、聞いていただきたいと思います。話の方向 性をわかりやすくするために、だいたい今日どんな方がいらしているかなと思っているんですが、20代の方手をあげてください。30代の方、40代の方もい らっしゃるんですね。
だいたい皆さんベンチャー企業、それからIT関係の企業をこれから起こしたいと思っていらっしゃる方なのかな?すでに起こしてどうかなって探りにきたっていう方なのかな?
三木谷 もうITブームは終わったんですね。
田代 もう終わっている。じゃあすでにこの段階でもうやっていない人は今からではもう遅いですか?
三木谷 いや、そんなことはないと思いますよ。ただちょっと工夫が必要かもしれないですね、昔みたいになんでもいいということではなくて。
田代 そこが多分1番難しいとこですよね。まだマーケットとしては面白いところがありますか?
三木谷 あると思いますし、前にも言っていましたけど今まではダイヤルアップの非常にナローバンドな環 境の中であぜ道の上で屋台で商売しているようなビジネスだったわけですけど、 これからは高速インターネットの上で全く違うインターネットワールドが展開していくんじゃないかと思っていますので、ビジネスオポチュニティーはいろいろ あるんじゃないかと思っています。
田代 例えばその高速ネットのお話でも、リクルートが88、89年くらいにNTTのブロードバンドを借りて企業に貸す卸問屋みたいなことをやろうとして撤退しましたね。
テレビもブロードバンドの普及によってもっと変わってくるだろうといわれているんだけど、予想よりはそういったペースではないという判断なんですよね。
このブロードバンドっていうのは三木谷さんはどういうふうに見ているんですか?
三木谷 だいたい起こる時っていうのは一瞬にして起こるんじゃないかな、というふうに思うんですね。で すから例えば僕はCCCの取締役も入っていますけれども20年後にレンタルビデオがありますか、 ないですよね、と聞くと多分皆さんないかも知れないと言うと思うんですよね。ではなぜ例えば10年でオンディマンド放送というのは始まらないんだ、あるい は5年で始まらないんだ、 3年で始まらないんだと、要するに最終形がどうなるかっていうのがすごく重要であって、その過程の時間軸っていうのはあまり重要ではないんじゃないかと 思っています。
ですからもしかしたら、ただ来るときは今回のインターネットショッピングもそうですけど、じわじわと成長していくということではなくて、 起こり出したらものすごいスピードで展開するということになるんじゃないかと思います。
田代 三木谷さんの中では、その楽天市場が凄いテンポで走り出したと思う時期っていうのは何年ですか?
三木谷 やはり2000年ですね。2000年は1年間で2000社から3000社契約しましたから、それまでは本当に年間100社とか150社とか、そういうレベルでした。
田代 わかりました。それではみなさんからの質問を代わりに聞いていきたいと思います。なぜ楽天とい う事業をやろうと思ったのか。何度も聞かれると思いますけど、さきほど直感なんだと、 科学的な理論はないとおっしゃったんですけれども、やはりアメリカに留学している間にアメリカのそういったマーケットに接して、アイデアをキャッチした、 ということもあるんですか?全然関係ない?
三木谷  当然アメリカの友人からいろんな話を聞いてヒントを得たというのもあるんですが、本当の理由は今まであまり言ったことないんですけどね、非常に飽き性なので、  このビジネスだったら飽きないなと思ったんですね。
それまでは例えばフランチャイズのパン屋を展開しようとか、パソコンの教室の展開をしようとかいろいろ考えたんですけども、これってすぐに飽きるなあとい うふうに思って、  このインターネットショッピングを考えていたときに、あ、これもできる、これもできる、これができたら次にこれができる、これができたらこれもできる し、  次こういうビジネスができるねっていうふうにどんどん発想が広がっていくので、これは自分の知的好奇心が満たされることはない。
なおかつ、やはりその飽きるっていうのが商売をやる上で1番リスキーだと思っていたので、これは飽きないからきっと成功するだろうと思ったんですね。
田代 「今だ」というきっかけは何かありましたか?
三木谷 なんとなくですよ。もう発想がバァーッと広がっていったんですよね。あ、これやったら誰でも成 功する。要するにポイントは誰でも簡単にインターネットショップができる、 クリック、クリック、としていたら勝手にインターネットショップができるっていうソフトウエアを作ったらすごいよね、っていう話で、それってできるのか なぁ、 といろんな人に聞いていたらできそうだ、という話になってじゃそれを作ってそのツールを作ることによって店舗をいっぱい集めてショッピングモールを作った らものすごい展開ができるよね、 という発想だけがもうパァーッと広がっていったので、もう歯止めが利かなかったですね。
田代 でも同じ時期に1社100万を取っていたところが普通だった中で、1社5万円という発想はどこから出てくるんですか?
三木谷 なんでかというとやっぱり毎月例えば30万円払い続けるということはものすごく短期的な成功を ショップを出す方にも求められるわけですよね、 企業の中で、毎年360万じゃないですか、ところが年間60万であれば例えば部長とか、取締役もですね、まあ失敗しても60万だったら、 将来性あるかもしれないからとりあえず続けとけっていう話になるだろうと思ったんですよ。それが僕がいっている時間軸のマネジメントなんですよね。
もしかしたら3年間インターネットショッピングが爆発しないかも知れないけれども、その間でもやり続けられるだけの料金設定じゃなくちゃいけない。
田代 私の実家は酒屋をやっているんですけども、実は三木谷さんが楽天を始めよう、というときに三木谷さんの奥さまから「どう?」と言われて、その時5万円だったらやってみてもいいかなって考えちゃうんですよね。
三木谷 今そのとき契約したワインショップは月間4000万円上がっていますよ。やっておくべきでしたね。
田代 それよりも転職して楽天に入れてもらっていれば…。次の質問ですが、ハーバードで学んだことで、何が実社会で1番役立っていますか?
三木谷  ビジネス感ていうんですかね。ベンチャーが一番素晴らしいとは思っていませんで、プロのビジネスマンっていう職業があるんじゃないかと思うんですね。
たとえば野球でいうとイチローっていうのはプロの野球選手で、彼にとって野球というのは仕事だけど仕事じゃないわけですね。自分の自己実現の道具であり、  なおかつお金を稼ぐ道具なんですけれども、日本でビジネスとか仕事っていうと暗いイメージがあるじゃないですか、やらされてる感みたいなのがありますよ ね。
そうじゃなくてプロのビジネス選手っていう考え方が成り立つんじゃないかと思っていまして、特にプロフェッショナルであるべきだという意識がある意味1番役立っているかも知れないですね。
つまり、たまたまやっているのがベンチャーであって大きな銀行を経営しろって言われたら、やってみせるよっていうところがあるわけで、別にその箱がイン ターネットビジネスであれ、  ラーメン屋であれ、銀行であれ、僕にとっては代わらないと思っているわけですね。
田代 今の日本の不況をどう思いますか?
三木谷 竹中さんに頑張っていただきたい。
田代 竹中さんで大丈夫ですか?悪いと言っているわけではなくてどういうご判断かなと思って。
三木谷 やはりもうハードランニングしかないんじゃないかと思っているので、最初はどうなのかな、と 思ったんですがやはりそれ以外のシナリオはあるのかといったら多分ないと思いますので、 消去法でいくと、かなり大変なことになると思いますけど、彼がいいということでやりとおすべきだと思っております。
田代 アメリカ型な考え方ですよね。アメリカはわりと全面的に賛成しているわけですよね。ちょっと永田町のいじめが入っていますからね、今の竹中さんには。
三木谷 じゃあ君達今まで何をやってきたんだとそういう話だと思いますけどね。
田代 そういうのを考えるとやはりもうそれしかないって事なんでしょうね。だけど多分こういう不況の 中でもビジネスチャンスを常に求めていく人はいるだろうしそれがないと、 日本の力は衰退していくわけですよね。こういう中でビジネスチャンスを発見していくポイントってありますか?
三木谷 不況っていう感覚は多分皆さんあまりないんじゃないかなって思うんですよね。僕今日そういう質 問を受けて不況じゃなしに「低成長」って呼んだほうがいいんじゃないかな、 と思ったんです。不況っていうとものすごい失業が大量に出て、経済的な窮地に立たされているというイメージだと思うんですけど、 今の状況というのは、表参道にあるルイヴィトンの前に3日前に並ぶ人がどんどんいるような日本経済でありますので、不況ということではなくて、お金を使う 人はまだまだお金を使う、 という、ビジネスオポチュニティーというのはまだまだいっぱいあるし、それから根本的に日本経済というのは非常に強いと思っていますので、そんなに悲観は してないです。
田代  私は98年にニューヨークから戻ってきたんですけれど、その時もやはり不況だ不況だといわれ て『2001』というフジテレビの報道の討論番組を当時担当していまして露木茂さんというアナウンサーと  一緒にやっていたんですが、その時に「でもアメリカに比べると日本は決して不況だとは思わないんですけれども」と意見したら、「おまえ、そんなことテレ ビで言ってみろ、浮くから。」と言われたんですけど、  そういうメディアの出し方っていうのもありますよね。
今日本はすごく困っているから、困っているから、といわれるとやはり、じゃあ使わないで取っておこうと思うじゃないですか。実際みなさんの中で  やはり不況だと強く思われる方いらっしゃいますか?どういう時でしょうか?
三木谷 いや、そうだと思いますよ。企業の中には当然GNPが成長していないわけですから,昔に比べる と難しいなというところはありますが、でもこれは構造的に日本だけの問題じゃなくて日本もアメリカもですね、物余りの時代になっていて昔みたいな爆発的成 長っていうのはいずれにせよあり得ないんじゃないかなと思っているんですけど、最大の問題というのはやはり不良債権で、あれがあるから日本人は暗い、あれ だけなくせばいいんじゃないかと僕は思っているんですけどね。
田代 これから土地があがってくる可能性っていうのはありますかね。
三木谷 経済評論家じゃないのでわからないですけどね。
田代 でも、その他のみなさんはあまり不況だというふうには思ってらっしゃらないということですよね。いかがでしょうか。
三木谷 20代の人は物心ついたときからずっと不況なんですよ。だから不況が普通。
田代 でも三木谷さんの20代っていうのは、不況が普通じゃなかったでしょ?
三木谷 バブリーな。
田代 そう、ちょうどバブリーな時期ですものね。三木谷さんの20代はどう過ごされましたか?
三木谷 30歳の時にちょうど興銀を辞めて会社を起こしましたので、20代はまず興銀に入ったんです ね、興銀に入って一番最初に外国為替部という事務セクションに配属になりまして、 友達はみんな花形の国際営業何部とか、ディーラーとかっていう花形部署に配属されているのに私は事務セクションに配属されてですね、いかなるものなのかと 思いましたけれども。
田代 それは地味な仕事なんですか?
三木谷  もうおばちゃんの中に混ざってハンコ押して帳票ペラペラめくってということで、でも僕はその 時やはり腐らなかったですね。腐らないで業務効率をどうしたらよくできるかとか、  そういうことで逆にそのオペレーションを一生懸命やったことが今かえって良かったのかなと思っているんです。
だいたい企業家の方ってコンセプトはいいんですけど、オペレーションをちゃんとまわせない、というのがあると思うんですよね。だからやはり、最初のフェー ズっていうのは当然、  ビジネスを作るっていうのもそうなんですけども事務も全部自分でやらなくちゃならないというのがありますから、そういう意味ではそれが非常に役に立った なと。
その後興銀の中では事務セクションにいたんですけど、最年少で1番いい大学に留学をさせてもらいまして、それは価値があるんじゃないかなと、花形部署から行ったんじゃなかったので。
で帰ってきてその後は逆に1番花形のM&Aの部署に行きまして、ソフトバンクの孫社長とか、CCCの松田さんとかと一緒にいろんなM&Aの案件をまとめました。
田代 興銀の社員のころから、そういった方々との交流はあったわけですね。
三木谷 ありましたね。なぜか興銀というとメインのクライアントは日立とか日産とかなんですけど、私だけ全部そういう、好き好んでそういう案件を選んでいたわけじゃないんですけど、 結果的にほとんどベンチャー企業、ベネッセとか、パソナとかでしたね。
田代 そういう意味でもラッキーだった部分もあるかもしれませんね。
三木谷 社長に気に入られたんでしょうね。だから、上の人もそういう案件を割り振ったんじゃないかと思うんですけど。
田代 そういうのができる、とみられていたってことでしょ?
三木谷 そういうベンチャー企業家の社長とちゃんとコミュニケーションができるということですね。
田代 日本のIT企業はこれからの日本を再興できますか?
三木谷  ITというのはいつも言っているんですけど、ひとくくりにしない方がいいんじゃないかと思っ ているんですね。ハードウエアの話をしているのか、  ソフトウエアの話をしているのかインフラの話をしているのかサービスの話をしているのか。僕はITっていうのは一応四つくらいには最低でも分けるべきだ と思っているんですね。  ただ、日本を再生するためっていうことを考えた場合は、一つは、根本的にいわゆる外貨をITで稼げるかどうかっていうのがポイントになるわけですね。
そうすると最終的にサービスを輸出するのか、ソフトウエアを輸出するのか、ハードウエアを輸出するのかっていう部品でも含めたところでもいいと思うんです が  、多分楽天みたいなサービスだけで日本が再生するということはあり得ないですね。基本的には流通をリアルからバーチャルに換えているだけなので経済効率 は上がるかもしれませんが  日本の経済を根本的に強くするということはないんじゃないかと思っていますし、ITというのはどちらかというとサポートするものだと思っていますので、  ITをうまく活用することによって日本企業は再生できると言い換えた方がいいかもしれないですね。
田代 では今後も日本再生の柱としてはあり得ないですか?サポートはしても根幹になる部分はIT企業ではあり得ないですか?
三木谷 ITの部品の輸出が輸出産業のリーディングインダストリーで、例えばデルコンピュータとか韓国 のサムソンとかそういうところに打ち勝つということであればそういう可能性はあるんだと思うんですけど、 かなり難しいんじゃないかと思います。むしろ大きな会社、日立ですとかトヨタであり日産というところが、ITをうまく活用することによって競争力を高めて いくということが重要だと思いますけどね。
田代 三木谷さんは行動したり決断したりするとき『ものさし』はありますか?
三木谷 直感ですね、ほとんど。ただ走りながら考えて、間違えていたらすぐ止まります。
田代 やはりこれまで成功してきた企業なり人なり見ていても、成功として残っているものの数以上に失敗して落としていった部分、排除した部分、撤退していった部分というのはやはり多いですよね?
三木谷 そうですね、一つのモットーは「メイク・ミステイク・アーリー」なんですね。より多くの失敗を して早く止める。ただ大々的にやる時はものすごく周到に準備しますけど、 だいたいパターンとしては、とりあえずちょっと実験的にやってみて、これうまくいくなって見極めができた次に、どっと資金を投入してビジネスを展開するっ ていうのが基本的なパターンなので、 その実験フェーズで、べつに失敗してもやるケースっていうのはあるんですね。失敗したけどこれをこういうふうに改善すればきっと成功するなぁ、って掴みが できればやるんですけど、 基本的には迷ったらやるっていうのが基本方針ですね、
田代 今その1番分かり易いインターネットの中で買い物をする、というカタチをつくっていく上で止めていったことって三木谷さんは具体的にはありますか?
三木谷 山のようにありますね。止めたことは。どこにいったんだっけあれ、というのはただ機能的な話で、根本的のビジネスモデル的にはほとんど変わってないですね。 だけど自分で考えていた仮説が間違っていたというのは本当に日常茶飯事ですね。
田代 主なところでいくと面白い例はありますか?
三木谷  例えば楽天の体制でいうと、今は事業部制になっていまして業界ごとに分かれてるんですね。例 えば食品はグルメ事業部、パソコンとかはIT事業部、ファッションはファッション事業部と、  消費者型に縦割りでやってるんですけど、1番最初の自論というのは事業部制でやると多分出店者さんの方がコンペティターも同じ人が担当しているというこ とになるので嫌がるだろうということで、  業界関係なく担当者を決めていました。その方が結果的に業務効率が上がるかなと思っていたんですが、ところがやってみると、やはり同じ業界を集めた方が いいということになったんですね。
その時も最初にとりあえず1つの業界だけ抜き出してやらせてみて、ああ、うまくいくね、となってからもう一度全部を再編するというかたちでの展開でしたね。
田代 私、実は数年前にお会いした時は、もっとあの時あった楽天という姿から、これをやろうと考えて いる、これもやろうと考えている、もしかしたらこっちに行くかも知れないな、 というのを私は印象として受けたので、多分そういう考え方があったんじゃないかなと思うんですよね。でも今日お会いして、その楽天というところで目的とし て4年後には1000億を1兆円にしていくんだという目標がしっかり今あるわけじゃないですか。その過程でやはり そういうのはありませんでしたか?楽天 の事業部をしっかりつくりあげていくということとは別に幅広い分野で。
三木谷 そうですね。一時はネットバブルの波に乗りまして、時価総額もありましたのでかなりアンビシャ スなことも考えましたけど、 やはりコアな楽天の付加価値っていうのは小さな店舗さんが日本全国を相手に商売できるということだと思っていますので原点回帰っていうのをどこかの時点で したのかもしれませんね。
田代 取扱い高1000億を4年後に1兆円という目標を達成するための手段というのは何か考えてらっしゃるんですか?今取引先が9000社というのはありましたけど。
三木谷  やるべき企画書は今13個くらいありましてそれを全部片っ端からやっていくという話になるん ですけど、簡単にいうと楽天のお客様は2つありまして、1つは出店者、もう1つは消費者なんですね。  出店者に向けてのサービス展開っていうのは今までもの凄く一生懸命やってきたんですけども、消費者に向けたサービス展開とかマーケティングっていうのは 一切やってこなかったんですね。  お客さんはこれだけいい商品があるから勝手に来て買うだろうということだったんですけども、それを変えまして、消費者に対するマーケティングもどんどん 強化していきます。
例えば11月1日からポイントプログラムというのを開始しまして楽天でやるとポイントがもらえる、というようなサービスであるとか、  商品をリコメンドしていくとか価格比較をもっとやり易くするというかたちで消費者が買えば買うほど得をするとか楽天って使い易いよねっていう消費者側の マーケティングを強化する。  当たり前のような話ですけど今まで一切やってこなかったんですよね。なぜかというと月額5万円だけしかもらっていなかったので、売れれば売れるほど、う ちとしてはサーバーを増やさなくてはならなかったので損だったんですね。  売れた方がいいんだけど売れすぎるとうちは損をするという微妙な立場だったのが4月に従量課金の投入をやって売れれば売れるほど楽天も得をするというモ デルに変わったので、  これからはユーザー側のマーケティングをどんどん強化していきたいなと思います。
田代 逆に取引社数をこれで抑えるんだ、ということもあるんですか?自然に増えていく分には排除しない?
三木谷 自然に増えていく分には排除しないですね。結局強い者が生き残るというマーケットプレイスなので逆に排除してしまった瞬間に既得権益みたいなのが生まれてしまうのでそれはやらない。
田代 今1番大事なものはなんですか?
三木谷 後悔しない気持ちですかね。やはり自分の人生観の中で何をやってもいいと思いますし、どういう 結果になってもいいと思うんですけど、ただしその時にひとつ条件があって、後悔しないという、 これをやって失敗しても後悔しないよね、という事はどんどんやっていくと思いますし自分の中で最後のものさしっていうと、後悔するかしないかっていうもの さしだと思うんですね。 それは楽天を始めた時も、興銀辞めた時も、今従量課金に移行していてもそうですし、もし従量課金に移行して楽天でぶっ潰れるかもしれないねって僕は思って いたけれども、 やらないで後悔するよりはやって後悔しようと思ってやったんです。そんなことでいいんですかね。家族とかって言わなくちゃいけないですよねきっと。家族で す。
田代 家族ねぇ。
三木谷 家族一人しかいませんけども。…何か趣旨がかわってきたような。
田代 楽天株式会社が持つ強みは何でしょうか?
三木谷 手前味噌だけどやはり社員だと思いますね。社員のモチベーションが非常に高い。 能力も結構高いと思いますけど、やはり自分たちで作ってきたという自負が他のアメリカのブランドさんを扱っている会社にはない強さなのかな。 自分たちで作ってきた日本の会社で、テクノロジーも自分たちで開発しているしサービスも自分たちでやってきている。全て自分たちで考えてやってきたという プライドがうちの社員にはあるので、 その部分は絶対に揺るがないというふうに思っています。
田代 ずっと勝ち続けるのは大変でしょ?
三木谷 勝ち続けてはいないんです、オークションなんかヤフーさんにやられていますしショッピングの分野では勝っているだけで他の分野では負けているところはいっぱいあります。
田代 でも勝っている分野を続けるっていう。
三木谷 好きなので。だからすごく大変だと思うか、それをチャレンジだと思うかというのはちょっとした モードの切り替えで、ものすごく大変なこともチャレンジだと思えばそのプロセスが楽しめるんじゃないかと思ってるんですね。ですから逆境になればなるほど 「ああ、これはチャレンジだから楽しもう」というふうに自分の心のスイッチを切り替えることが今まではできているので、これからできない局面がくるかもし れませんけどそういう意味では未だかつて大変だと思ったことは一度もないですね。
田代 すごく抽象的ですよね、企業を始める理由は何かというところで直感で決めました。後悔はしない し、苦労は苦労と思わないし、という成功者の話は非常に、そうではない性格の人間が聞いているとなかなか身近に感じない、だから遠い存在なんだろうけれど も。でも割と身近にあるものからビジネスって生まれるじゃないですか。
三木谷  そういう意味でいうと楽天で僕らが1番うれしい瞬間というのはものすごく有名な店舗が月に2 億円売れましたということじゃなくて、もう姫路の田舎のそうめん屋のおっちゃんが、「いやー社長今月は150万も売れた」っていう時の方が僕らにとっては 幸せを感じる瞬間なんですね。だからそういう弱者救済じゃないですけど楽天がなくなっちゃうとものすごく困る人がいっぱいいると思うんですよね、いまや。
3000社か4000社の会社が、正直いって儲かってない会社もありますが、楽天の上で商売して、もう本当に店舗閉じちゃって楽天だけで勝負しているとか ですね、従業員そのための15人も雇ってしまったとか20人雇ってしまったとかいう企業がいっぱいあって、そういう企業の人たちが一生懸命やって、自分の 思い入れのある商品が売れた、自分のつくった卵が売れたでも牛肉が売れたでも何でもいいんですけども、そういうのを実現させてあげたいんですよね。
田代 最初に少し質問させていただいたんですが、ブロードバンドの普及に伴い、楽天のサービスは変化するんでしょうか?
三木谷 変化するところもありますけども根本的には変化はしないと思いますよ。つまりもう少し画像を取 り入れたりですね、動画を取り入れたりするようなサービスを展開すると思うんですけれども基本的には、今までの非常に使いにくかったインターネット環境 が、もっとさくさくと静止画がみられるようになるというのが1番大きいと思っています。
田代 消費者にとっては大きく変わりますけれども、サービスとして提供する側はこれまでと変わらないということですか?
三木谷 変わらないですね、きっと。ただ、もしかして変わるとすると先ほども言いましたテレビにイン ターネットがつながった時、これはちょっと変わるかもしれないな。例えばドラマやっている時に、ドラマに関連ある商品をネットで買える。田代さんのつけて いるネックレスがいいな、と思えばその場で買えるとかですね。そういうようなサービスの展開にきっとなるだろうなと思っていますし、そういう展開が出来て きた時にはもう少しインターネットショッピングというのはテレビショッピングよりな色彩を持ってくる可能性があるなと思います。
田代 それはタイミングの見極めがまた難しいですよね。展開していく時に。
三木谷  そうですね。これは5年、10年タームの話かなと思っています。
1番いいのはローコストで早く手をつけること。オペレーティングコストを抑えてですね。楽天のビジネスモデルも先ほど言いましたように、いつインターネッ トショッピングが爆発するかっていうのはわからなかったんです。しかし月額5万円で例えば200社集めれば月間1000万円の売上が立つ。1000万円あ ればベンチャーであれば6人や7人くらい雇えるわけですよね。その段階をずっとやっている間にいずれ波がくるだろう、ただしその波が来る準備ができている かどうかっていうのが重要だと思うんですよね。
たまたまベストなタイミングでベストのビジネスを始めるっていう事はほとんどあり得ない話なので波がくるかもしれない少し前にあらかじめローコストで始めておくというのがすごく重要なんじゃないかなと思うんですよね。
田代 わかりました。その他にみなさんから何か質問はありますか?
公聴者 三木谷さんがベンチャーを立ち上げる時に、最初孫さんが出資を断ったのはなぜだと思いますか?また、いま三木谷さんのところへ若手ベンチャー企業家からの出資の申し出があった時に、三木谷さんの心が動くポイントを教えて下さい。
三木谷  非常に明快でありまして、「俺はアメリカで成功したビジネスしかやらないんだ。」「日本でや るビジネスはアメリカで成功したビジネスがようやく日本で成功するかどうかだ。」というのが孫さんの理由でした。たぶん僕のことは能力的に当時から買って いたと思うんですが、だけど日本発のビジネスなんて成功するはずがないと、またそれもカチンときて絶対やってやろうと思いましたけれどもね。僕らは逆に日 本発のものが作りたい、というのが基本的な発想だったので、そこは相容れないのでいいやということでありました。
僕が出資するのであれば、はっきりいって人ですね。あまりビジネスプランは関係ないです。基本は、こいつは何がなんでも成功させるというふうに思えるかど うか。あるいは個人で投資するのなら失敗してもまあこいつだったらいいやと、思えるかどうかということですね。組織ぐるみで楽天から投資するということで あればこれはちょっと話は別ですが。
三木谷  多分3割くらいしか理解してもらえないと思うんですよね。あとの7割はもう基本的には信頼し てもらうということなんじゃないかなと思うんですよ。その時にはあいつが言っているならもっと深い考えがあるだろうと思えるような関係性を普段から築いて いるかどうかということだと思うんですね。
ぼくの場合は簡単に言うとごちゃごちゃ言わずについて来いっていうことだったわけですけどそれは年令差もありましたしビジネス経験の差もあったし、それか ら僕が全員食わせてましたからそういうことがあったんだと思いますけど、今はそういうことは通用しなくて、できるだけ分かり易く説明をして最後はおまえら が反対するなら止めるという決定権をゆだねるとだいたい反対できないものですよね。ですから全部を伝えようとしても無理だと思うのでポイントだけを分かり 易く説明するということが重要だと思います。
三木谷 そうですね。じゃあ逆になぜそれがワークしないんですか、という逆説的な説明の方法もあると思 うんですよね。例えばなぜブロードバンドが普及しないと思っているんですかと。 だいたい過去の経験に基づいて否定的になるということがパターンとしてはあると思うんですよね。だからじゃあ逆になんでこれが成功しないと思うんですか、 という話を聞いてみるというのはあると思うんですよね。 じゃあ楽天が1兆円にいかないというケースはどういうケースなんですか、という話を別にこうこうこういうケースなんじゃないかと向こうが言い出したらじゃ あそれに対してキャッチボールで論破していくというやり方、 テクニックを僕は結構使いますね。
田代 1兆円にいかないケースっていうのはどんなケースですか?4年間で1兆円を目指していらっしゃ るということはそれなりのシナリオがあるわけですよね。 そうすると、1兆円にいかないシナリオも考えてらして、そうじゃなくてこういうふうにやっていくんだっていうことですよね。
三木谷 行かないシナリオっていうのは環境的に、ですね。日本の金融危機がきて日本の経済が崩壊すると いうケースが一番可能性としては高いなと思っているのと、 そうではなくても個人消費がかなり低迷するということはあるだろうなというふうには思っていますがケースとしてはですね、リスクという意味では僕らがとろ うとするべきアクションが取れないということですよね。今言っていましたユーザーサイドの機能性をもっと上げようと思っているわけですけど、それをやる前 に、他のコンペティターにどんどんマーケットを取られちゃうと。いうのはそのリスクとしては高いなと思いますけど。
田代 他に質問がある方。どうぞ。
公聴者 楽天株式会社の強みは、社員のモチベーションの高さだと仰いましたが、では仮に現在の楽天株式会社と同じビジネスモデルを持った、モチベーションの高い組織が現れたら、やはりその組織は成長するのでしょうか?
三木谷 成長していくでしょうね。成長すると思いますよ。それは全く同じフィールドでコンピートしたらどうなるかっていう話ですか?
公聴者 「強み」というところでモチベーションがそこまで大切かなのか?それとも、ビジネスモデルがしっかりしていて、その上にモチベーションの高さがあるから成長したのかということです。
三木谷 それはビジネスも必要ですしもうひとつやはりビジョンというのもうちくらいの会社の規模だとす ごく重要かもしれませんね。 特にインターネットショッピングってどうなるのかわからない中にあって、「あの方向に行くんだ」ってことを言い切れるかどうかっていうことがすごく重要な ファクターとしてはあると思います。ただ1番の土台の強さって何かっていうと、やはり社員のモチベーションなんだろうなと思います。
田代 他に質問ありませんか?
公聴者 社員のモチベーションを高く維持するためになさってることはなんですか?
三木谷 基本的にはやはりオーナーシップだと思うんですよね。僕が日本の会社で働いていて1番嫌だった のは上司が自分の手柄を取っていくって事だったので、 やはりこれは君の仕事だ、と言うことをちゃんと私も認知しますし、組織的にも認知しましてそして成功したらちゃんと誉めてあげる。
当たり前のことなんですけれどもそういう事がすごく重要なのではないかと思っております。我々は毎月楽天賞というので10人も20人も表彰するんですけれども。
田代 それはどういう賞ですか?
三木谷  金額にしたら1万円とか2万円、多いもので3万円くらい貰えるだけなんですけれども、受賞は 営業のMVPですとか、スタッフ間接部門のMVPですとか、  1番クリエイティブなことをやった人とかですね。あるいは今ものすごく推し進めているプロジェクトがあったらそれに1番貢献した人とかですね。
後は何か新しい発想をした人がいればちゃんとみんなの前で表彰してあげるっていう事をしていますね。
アメリカには多いんですけれども、うちの会社では人事部ではなくピープル部という名前にしまして、管理するんじゃなくて、  そのコミュニケーションを中心としてモチベーションをどうやってあげるかという、ルール作りはやりますけれども管理はやめようと。
三木谷 最初数人でしたよね。
三木谷 5人でしたね。
田代 5人からスタートして今現在250人。その人が増えていく時に社長として1番気を使われたことというのはどういう事ですか?
三木谷 今でも気を使いまくりなんですけれども。
田代 5人でやっている時は「おおっ」っていけるじゃないですか。
三木谷 言い方悪いんですけど自分が走るんじゃなしに馬をどうやって走らせなくてはいけないか、ということですよね。
田代 三木谷さんがそういうふうに考えているというのは意外です。いつも自分で走っているようにみえるじゃないですか。
ではなくて人数が増えてくるとやはり走らせることが重要だということですか?
三木谷 そうですね、自分も走ってないと嫌なタイプなので自分の狭い分野を決めるわけですよ。この分野は俺がやる。そこは自分がやるんですけど、 それ以外は逆にいうと忙しくてできないので他の人にやってもらう。自分の性格をかなりちゃんと理解されてらっしゃいますね。
田代 直感ですから。他にありますか?今日は世界経営者会議というのがつい先ほどまであったんですか?
三木谷 そうですね。まわりはすごい人達ばかりでしたね。BMWの社長ですとかモルガンスタンレーの社長ですとか、なんで僕が呼ばれたのかよくわかりませんけれども。
田代 それは皆さん経営について議論するんですか?
三木谷 それぞれが話すんです。
田代 何かおもしろい話はありましたか?
三木谷 僕はローソンの新波さんと2人でパネルディスカッションをしたんですけれども、流通ということ についてコンビニエンスストアという観念と、 インターネットショッピングという観念でいろんな話し合いをしたんですが、やはりインターネットショッピングってこういうふうになると思うんですよねって いう、先程言った価格の話であったり、重い物とか嗜好性の高いものがインターネットで買えるようになりますよねっていう話をした時に、皆さんうなずいて らっしゃいましたね。 実感があるんでしょうね。多分流通の方はかなり、インターネットショッピングについて意識しているんだろうなというふうに思いました。
田代 危機感を持っていらっしゃるんですね。ということは今のコンビニネットワークを使った流通というのはもうピークなんですかね。もっとさらに発展していくっていうことではなく。
三木谷
その前にイトーヨーカドーの鈴木会長が話をして、ウォルマートの国際部門の社長が話をしていた んですけれども、基本的にはやはり価格競争に入るか、 あるいはコンビニエンスストアがどちらかというとピークアウトして、フラットの中で今後どうやっていくか、新しい機能をいれていかないと成長しないよね、 という話でしたね。
田代 ほかに皆さん質問はありませんか?
三木谷 本当に日本というのはやばい状態じゃないかと思いまして、何がやばいかというと別にその不良債 権がやばいとかではなくて、若い人の元気がないというのが大きな問題じゃないかと思っていますし、夢を語る人が少なくなってきたと、特にこのネットバブル が弾けてほらみたことか、といっているおじさんたちが多いんじゃないかと思っているんです。
やはり僕は新しい産業というのは新しい世代の人がどんどん、大きな会社にいるのか自分で会社を起こすのかは別として、チャレンジしていくことから始まって いくんじゃないかと思っていまして、我々の存在といいますか、どうしても成功したいというのは、例えばアメリカにいって「アメリカにはアマゾンがあって イーベイがあってAOLもあるしヤフーもあるんだよ」と言われた時に、 日本人が「日本にも楽天っていう会社があってこれがなかなか凄いんだよ、知らないの?」というふうに自慢してもらえるような会社になりたいなぁというふう に思っていまして、それによってまた新しいビジネスにチャレンジしてくれる人が出てくるんじゃないかな、というふうに考えて会社をやっております。今度副 社長が辞任したんですけれども、もともと僕と本庄というのが楽天というビジネスを始めた、当然ビジネスとして成功したいというのもありましたが、 この閉塞感のある日本経済に新風を吹き込もうというのが僕たちのモットーだったので、大企業から三木谷の成功をみて、人が辞めるっていう意味では結構貢献 したかなと思うんですけれども、一方で最近新しいことにチャレンジするという人が減ってきているというように思いますので、是非みなさんチャレンジ精神を 持って、新しいことにチャレンジしていただきたいと思います。
田代 そうですね、20代の方、反論何かありませんか?私も若い方達をみて、なんでそんなにおとなし いんだろうと思うんですけれどもね。割とうちのフジテレビっていうのは元気な会社なんですけれども、うちに入ってくる新入社員もすごくおとなしいんですよ ね。おりこうさんが多いですし。
三木谷 まじめすぎますよね。
田代 そう、つまらないんですよね。20代の反論ありませんか?個人個人は元気があるのかも知れませんけどね。
それが姿としてみえないのかなぁ。私たちのころはちょうどバブル入社だったので、80人くらい採用されていて、今は30人弱なんですけれどもよく言われた のが、お前たちは銀行にいってもそれなりに普通のサラリーマンやってそうだなっていう批判をよく受けたんですね。
そういう意味ではチャレンジ精神が旺盛だ、とかこいつは面白い、というのは少なかったかもしれないし、そういう採用の仕方が続いているのかもしれないです ね、少なくなってくるとリスクを減らそうとしますからね。そういう企業にいかなかったゆえにもっと1人でエネルギーを出してできる仕事というのもあるじゃ ないですか。でも若い人に期待していきたいですよね。
以上でオープンカレッジをお開きにしたいと思います。どうも今日はありがとうございました。
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